熊田千佳慕(くまだちかぼ 1911生まれ 95歳)は、第二次大戦前デザイナーとして、また戦後を絵本作家、昆虫や花を描く美術家として活躍を続けてきました。詩人・熊田精華は実兄で、その親友である山名文夫に千佳慕はデザイナーとして師事しました。東京美術学校在籍中の1934年に日本工房に入社。中心的なデザイナーだった山名が退職した後を継いで、海外向グラフ誌『NIPPON』のレイアウトなどを担当しました。
戦後は、絵本「不思議の国のアリス」を描いたのをはじめ、現在まで色彩豊かで緻密な昆虫や花の作品を数多く制作しています。フランスでも「プチ・ファーブル」という愛称で呼ばれ、ファーブルの昆虫記シリーズを描き続けています。 1998年には「福原義春サクセスフルエイジング対談 花と語り、虫と遊ぶ」(熊田千佳慕・福原義春 求龍堂)が刊行されました。
本展では、日本工房での仕事や絵本の原画、水彩画を中心に約300点で熊田千佳慕のこれまでの足跡をたどります。時代に流されず、深く優しいまなざしで生命を見つめる作家の姿をごらんください。