スペインのバスク地方出身の彫刻家エドゥアルド・チリーダ(1924-2002)は、スペインをはじめとする欧米の各地に設置された屋外彫刻によって知られています。彼の作品はしばしば規模も大きく、素材の特性を強調するものですが、周囲の環境と対峙するのではなく、環境との対話を試みるという性格を宿しています。作品は物のかたまりとして屹立する以上に、周囲の空間や内側に空隙としてとりこまれた空間を同等の比重で扱い、対話するという特質をそこに見出すことができるでしょう。そこには雄大さや抱擁感、時にほのかなユーモアが漂っています。
チリーダの作品はその規模の大きさゆえ、これまで日本ではまとまった形では紹介されていませんでしたが、今回の展覧会は彫刻家の故郷サン・セバスティアン近郊にあるチリーダ=レク美術館の全面的な協力により、大規模な作品こそ物理的な制約ゆえ展示できないものの、鉄やスティールなどによる彫刻、テラコッタによる《土》のシリーズ、紙による浮彫彫刻というべき《重力》のシリーズ、そして版画などによってこの彫刻家の多面的な姿を紹介しようとするものです。