浅野弥衛(1914-1996)、小林研三(1924-2001)、伊藤利彦(1928-2006)の三人は、三重に生まれ、生涯この地を活動の拠点とした作家たちです。ほとんどが白か黒のみの地をひっかいて得られた線が自在に変幻する浅野、明るく穏やかな色彩が童話的なイメージを紡ぐ小林、暗鬱な物質性の強調、観念的な制作の問い直しを経て、箱の中に畳みこまれた晴朗な白のレリーフに達した伊藤と、その作風は全く異なりますが、三人は親しく親交を結んでいました。先の2006年11月伊藤氏が逝去されたことを機に、追悼の念を込めて、当館の所蔵品によって三人の活動を振り返ります。当館所蔵作品が三人の活動を全て覆いうるわけではありませんが、この機会に、三人の遺した作品をあらためて見直すことが、三重地方の未来につながる何らかのきっかけになればと期待するものです。