マリーの幅広い活躍の中で、もっとも身近に感じられるものの一つが「さしえ」ではないでしょうか。「不思議の国のアリス」からジッドなど同時代の大作家まで、多くの本に絵を提供しています。書籍という完結した世界の中に収まって私たちの身に寄り添うような、もう一つのマリーの作品世界です。 19世紀末から盛んになった芸術作品としての「挿絵本」は、「さしえが入った本」といっても、「物語を読む手助けとしてはさまれたイラスト」とは少し違います。出版元は多くの場合画廊や芸術に意欲的な出版社で、古今の文章に画家を向き合わせることで新しい芸術作品としての「挿絵(さしえ)本」を生み出しました。今日でいう「コラボレーション(共同作業)」です。マリーも多くのオリジナル版画や、水彩やペンで描いた原画の挿絵本制作に携わりました。今回はその世界を眺めていきます。
また、常設展示「ローランサンの生涯と芸術 2006年度第3期」では、マリーの生涯の画風の変遷が見渡せる、当館ならではの展示になっています。
出品作品
挿絵本《不思議の国のアリス》(1930年)の他、油彩、水彩、版画、本、
その他資料等計約90~100点。(常設展示と合わせて)