日本最古の歴史書『古事記』には、「大和し麗し」の言葉があります。「うるはし」は、古くは相手を賞賛する気持ちから発し、後に、きちんと整っていて礼儀正しいという意味で使われてきました。「見め麗しい」という表現もあるように、美しくきれいであることも意味しています。
ここでは、日本の書画や陶磁器などの美術品に表現されたさまざまな事物や自然の「麗しき」すがたを取り上げます。
たとえば日本独自の文字である仮名は、しなやかな線と華やかな料紙によって壮麗な美しさが追求されてきました。古代においては小さな紙面上の芸術でしたが、現代では大型のダイナミックな作品も多く見られます。
北海道で大字仮名を広く普及させた松本春子は、源氏物語を題材にした華麗な金屏風を手がけ、継ぎ紙で山々を表した六曲屏風には、娘の松本暎子が古今集賀歌を書いています。
絵画では今日においても「大和絵」の伝統が受け継がれ、日本ならではの季節感や自然の美しさが表現されています。日本を代表する名山の富士や早春を告げる梅の花は、古来、詩歌の題材にも詠まれてきましたが、現在でも画題として人気の高いテーマです。また、艶やかな着物を身にまとった舞妓の姿は、日本の伝統的な女性の美しさを表現しています。
このほか、近現代の陶磁器や松前町出身の書家・金子鴎亭の作品等により、「麗しき」日本の美をお楽しみ頂ければ幸いです。