洋画界の俊才として早くから注目を集めた野田弘志は、現代日本の具象画壇を代表する画家の一人です。西欧の古典絵画に学んだ徹底的な細密描写によって国内外から高い評価を得、70歳を迎えた今日まで、たゆむことなく第一線で作品の制作を重ねてきました。卓越した描写力によって描かれた作品には静謐な神秘性が漂い、画家は、単なる写実を超え、存在する物自体がもつ美の表現を追究しています。
本展は、作者の古稀を記念して開催され、写実の神髄を極めた緊張感のある作品によって、画家が表現してきた美の世界を回顧します。初期の静物画から近年の「TOKIJIKU(非時)」、「THE」シリーズまで油彩による代表作約70点に、「湿原」などの挿絵原画、鉛筆画、淡彩画など、あわせておよそ90点を一堂に集めご覧いただきます。