中国南部から東南アジアの北部地域に暮らす多くの少数民族は、今なお自らの伝統的な生活方式を守って暮らしています。中でも中国貴州省の山間部を中心に居住するトン族は、藍を基調とした染、高度な織、緻密な刺繍やプリーツ加工による美しい染織品を作る民族として注目されます。各家庭には藍の染料を生葉から発行させて作る藍甕があり、染・織・刺繍などのすべての工程を母娘の手が行うというのもで、生活そのものの中から生まれたものでありながら、非常に洗練された美意識を持っています。
この展覧会では、これまで紹介される機会のほとんとなかったトン族の染織品を中心に、周辺民族であるミャオ族、タイ族などの染織品も展示、その驚異的ともいえる究極の手技の美を紹介します。タイ在住の染織家瀧澤久仁子氏のコレクションより選りすぐられた約230点の染織による展観です。
現代の服飾デザイナーもまたこれら民族の衣装に注目し、それを発想契機の一つとした服が生まれていることから、現代ファッションとのかかわりという視点を広げることも可能です。またこれらの民族は古代長江流域(呉越の国)より戦禍を逃れて南下してきた人々に起源を持つことから、同様の起源を持つ日本人の美意識・文化の源流としての視点からも興味深い内容です。
出品点数:237点