アドリア海の真珠、ヴェネツィア。海と空、人工と自然、東洋と西洋の交わる場所に浮かぶこの島は、類まれな芸術の都として、中世以来、ヨーロッパ文化の展開に大きな役割を果たしてきました。とりわけイタリア・ルネサンスの栄光は、ヴェネツィアの画家たちの活躍によって高められ、鮮やかさを増したといってよいでしょう。フィレンツェやローマの画家たちが線・素描の力を重視したのに対し、ティツィアーノを筆頭に、ティントレット、ヴェロネーゼといった16世紀のヴェネツィア人たちは、色彩とタッチを活かした「絵画的」スタイルを確立し、以後の近代絵画の展開にも大きな影響を与えることになります。
18世紀に入っても、その華やかなスタイルはヴェネツィア絵画の証であり続けましたが、いっぽうで、カナレットやロンギなど、水都ヴェネツィアの光景を活写する風景画家、風俗画家が登場し、ヴェネツィアはいよいよ画術の都として光彩を放つことになります。
本展覧会はイタリアの美術館、プライベート・コレクションから選ばれた作品約70点で、ヴェネツィア絵画の展開をふりかえるものです。宗教画からヴェドゥータ(都市景観画)にいたる多彩な主題は、ヴェネツィア人の生きた現実、思い描いた世界をも私たちに垣間見せてくれるでしょう。生と芸術の交わるところ、ヴェネツィアが育んだ絵画の魅力をご堪能ください。