地表から霧や霞が立ちのぼり、垂れ込めた雲から落ちる雨や雪が川に流れ、湖・海へと至る―つぎつぎに形を変える「水」。暑い季節に涼を得たり、はかなく消える露にしみじみとした風情を感じ取るなど、さまざまな人と水との関わりは、多くの美術工芸品のデザインにも表れています。川や湖、海などの水辺の風景は、風俗画や名所絵として、あるいは詩歌などの文学作品を背景として描かれました。また、水流や波しぶき、草花にやどる露、雪の結晶など、変化する水の姿にも目が向けられ、デザインに取り入れられています。そうした水の造形からは、折々の季節感や吉祥の願いなどが読みとられてきました。
さまざまな作品を通して、移ろいやすくとらえがたい「水」の動きや状態を、形として表現してきた日本の美意識を紹介します。