展示室1 やきものに見るユーモアとエロス
京都の陶芸集団「走泥社」が用途へのこだわりを捨て、土による自由な造形の端緒を開いたのが1948年。以来現在に至る約60年の間に、多くの作家がまだ見ぬ新しい表現を求めて「前衛的なやきもの」の制作に取り組んできました。それらの作品はじつに多彩な傾向を有し百花繚乱の様相を呈していますが、とりわけ目に付く傾向として、「ユーモア」と「エロス」があります。
「ユーモア」と「エロス」はいずれの性質も、前衛陶芸の基本的性格に由来し、その展開においてなかば必然的にもたらされたものといえます。つまり、用途へのこだわりや伝統的な因習から解放され、自由な造形を追い求めるようになったやきものは、「遊び」の要素を積極的に取り入れ、そこに「おかしみ」や「ユーモア」の感覚が生まれるのです。そして、手と土の対話によって形が作られていくというやきものの性格上、曲線を帯びた有機的な形態が生み出されやすく、そこに光沢のある釉薬がかけられることとも相まって、官能的な「エロス」の感覚が生まれるのです。
このたびの展示では、高松市美術館コレクションから、「ユーモア」と「エロス」をキーワードに、現代の陶芸46作品(14作家)をご紹介します。やきものに込められた、さまざまな形の「ユーモア」と「エロス」の表現をお楽しみください。
展示室2 うるみ会の作家たち
戦後復員した漆芸家・明石朴景は、昭和21(1947)年2月、窪田良次、加島信夫、真子実也、三村比呂志とともに〈工芸七彩会〉を結成し、昭和24(1949)年1月には坂根博、酒井敬之助、大島唯史の入会と共に、会の名称を〈うるみ会〉に変更しました。
「うるみ」とは、朱と黒の間の漆独特の色合いのことで、主宰者・明石朴景による造語です。「新しい泉を掘ろうと集った同人達 泉は掘りはじめは汚い水も出るが次第に清い水がでる 明るい新しい工芸を創ろう そして一つ掘り終れば他のものを掘る」をスローガンに、〈うるみ会〉は研究会や展覧会の開催、パネル作品の創案など、若手工芸家たちによる個性を重視した意欲的な創作活動を展開し、日展特選受賞者を輩出するなどの成果を上げながら、戦後香川の漆芸界をリードしました。
このたびの展示では、旧態依然とした漆芸のイメージを払拭し、時代に即した明るく新しい漆工芸を追求した明石朴・・・