「太陽と精霊の布」展では、貴州省、湖南省、広西チワン族自治区、雲南省など中国南部から東南アジアの北部域に暮らす少数民族の染織を紹介いたします。本展に登場する諸民族は、漢族の南征を逃れて長江流域から南下した人々で、日本人のルーツにもかかわると目されています。
彼らは山奥など中国の中央政治から隔てられた僻地に分散し、古代さながらの文化を受け継いでいます。とりわけ全工程が手仕事による染織品は、技術と美意識において洗練を極め、現代デザインにも多大な影響を与えています。
今回の展覧会には、日本ではほとんど紹介されてこなかった多彩な民族 ――黒に近い深い藍に染めた布をシンプルで洗練されたデザインの刺繍で飾るトン族、赤やピンクの華やかな彩りと布を重ねる立体的な装飾を特色とするミャオ族、精霊(ピー)のいる呪術的世界に生き、信仰に根ざした装飾文化を持つタイ族など――の布が出品されます。
縄文土器と共通する渦巻き文が見出されるものなど、彼らの文様には、日本文化の源流について考える手がかりもとどめられています。本展は、この未知なる装飾文化にふれることができる、またとない貴重な機会といえるでしょう。