浮世絵を代表する絵師・歌川広重(1797~1858)といえば、一昔前ならお茶漬け海苔のおまけのあの人、ですぐ分かったものですが、最近のお茶漬け海苔といったら高見盛なんだそうな。まあどちらもちょんまげ結ってるには違いないけど。
そのお茶漬け海苔のおまけで有名な保永堂版「東海道五拾三次」もいいけど、浮世絵通に言わせれば、広重の最高傑作は「木曾街道六拾九次」の「洗馬」なのだそうで、たしかにこの絵の描画力はただ者じゃありません。この「木曾街道六拾九次」、実は美人画で名高い溪斎英泉筆でスタートしたのが、なぜか24図を描いて広重にチェンジ、さらに版元まで交代するという謎のシリーズなのです。そのせいか、後摺がたくさん出てきて大混乱、英泉の落款が削られたもの(「桶川」「本庄」)まで出てくる始末。そのため初摺で完全にそろえるのは無理、と言われていたのです。
ところが、優秀な初摺の「木曾街道六拾九次」の全揃いが、なんとアメリカで発見されました。世界に数点しか現存していないという「雨の中津川」まであります。さらに110年余のあいだ行方不明で、80年前にアメリカで発見された広重の「幻のスケッチブック」である『甲州日記写生張』も併せて日本に里帰り、というのがこの展覧会なのです。
特別出品「陸奥安達百目木驛八景圖」版木
広重は福島県にものその足跡を残しています。郡山市の北東、阿武隈山系に抱かれた百目木の里(どうめきのさと・二本松市)の名所を描いた「陸奥安達百目木驛八景圖」の版木が10年ぶりに公開されます。
展示替えのお知らせ
「江戸近郊八景」は下記のとおり展示替えを行います。
前期(~9月30日):「吾嬬橋」「玉川」「池上」「行徳」
後期(10月2日):「芝浦」「小金井橋」「羽根田」「飛鳥山」