コロボックル物語の第一作「だれも知らない小さな国」は1959年(昭和34)講談社から出版され、日本児童文学に初めてファンタジーの領域を拓いた作品として毎日出版文化賞、児童文学者協会新人賞、国際アンデルセン賞国内賞を受賞しました。その後書かれた「豆つぶほどの小さな犬」など6つのコロボックル物語は、発表から半世紀近く経った今、ロングセラーとして親から子へと読み継がれています。
佐藤さとるは1928年横須賀市に生まれ、コロボックル物語はこの故郷の記憶から生まれました。シリーズ第一作のタイトルとなった「だれも知らない小さな国」とは幼い時に心の中に育んだ世界のことで、コロボックル物語は幼年時代の大切さを人々に語りかけます。本展は「だれも知らない小さな国」を児童文学の枠を超えた、子どもにも大人にも感銘を与える作品として紹介します。子ども時代に家族や友人の中で育んだ心の中の宝物、大人になってそれを糧にすることの大切さを思うならば、同じ道を前後して歩む大人と子どもにとって大事なものは同じなのではないでしょうか。展覧会が大人と子どもが一つの作品について語り合う場となれば幸いです。
【展覧会の構成】
第Ⅰ部 コロボックル物語誕生まで
第Ⅱ部 私のコロボックル-村上勉描く挿絵の世界
第Ⅰ部では佐藤さとるの幼年時代と作品発表までを写真や文学資料でたどり、第Ⅱ部では、コロボックル物語に添えられた村上勉の挿絵原画を展示します。