井上靖は1907年(明治40)に生まれ、本年生誕100年を迎えます。1949年(昭和24)「猟銃」を発表して創作活動に入り、翌年「闘牛」によって芥川賞を受賞しました。いらい、1991年(平成3)に83歳で亡くなるまでの約40年間に多くの作品を発表しました。その創作世界はきわめて広く、詩をはじめとして、現代小説にも歴史小説にも多くの名作をのこし、作品の舞台は身辺や国内はもちろん、中国、西域、アメリカ、ロシアなどに及んでいます。
これら作品の著書、初出誌、参考文献、原稿、創作メモ、取材ノート類のほか、書簡や書斎の愛用品など14,000点にのぼる膨大な資料が、1996年から2001年にかけてふみ夫人から当館に寄贈されました。当館ではこれらの資料を「井上靖文庫」として一括保存し、また当館設立発起人の一人である井上靖の功績を顕彰して「井上靖記念室」を設けました。
また、当館では2003年秋に特別展「井上靖展 詩と物語の大河-北国 氷壁 とん敦こう煌 しろばんば 孔子-」(会期・10月4日~11月16日 編集委員・大岡信、曾根博義総点数450点)を開催しました。生誕100年を記念して開催される本展では、この展覧会に出品された「井上靖文庫」資料から精選して、初期詩稿、「しろばんば」、「闘牛」、「本覚坊遺文」などの原稿、中国・西域取材ノート、遺品、写真パネルなど約150点の資料によって井上靖の多彩な作品世界を紹介します。
同時開催
常設展 文学の森へ 神奈川と作家たち
第1部:夏目漱石から萩原朔太郎まで