このたび、南アルプス市立春仙美術館・白根桃源美術館では「深沢幸雄の全貌」展を開催いたします。
優れた芸術家はあらゆる分野において際限なく自己を表現しつづけます。そんな多岐にわたる分野で制作しつづける深沢幸雄先生から、当美術館あてに多くの美術品をご寄贈いただきました。
先生は当市に隣接する増穂町出身で、身近な郷土作家といえます。ご寄贈いただいた作品群は、版画、パステル画、書、陶芸作品のほか、新しいガラス絵作品にいたる400点余りにおよび、今後の美術館活動に大きな力となり得るものになりました。
先生は東京美術学校(現 東京芸術大学)工芸科彫金部を卒業され、第二次世界大戦中膝を負傷し、油彩の大作を制作するのに不便なところから版画の世界を目指し、独自の世界をつくりあげ、技法書も出版するほど版画界に大きな功績を残されました。また、銅版画を教えるために渡ったメキシコで、メキシコ文化の大きな影響を受け、その後の深沢作品の根幹をなすに至ります。
特にメゾチントの大作制作のために製版ロボット「チンタラ一世」を開発し、刷り師として長女暁子さんを得たことにより、1000点を超える多作な作家となりました。さらに、書においても自動墨すり機を手作りして日常的に書に励み、自作の詩なども多く書き上げ、陶芸にも力量を発揮し、余技の域を超えるにいたりました。近年は新しくガラス絵に取り組み、これまでのガラス絵を一新する技法で次々と作品を生み出し、熱中するあまり、体調をくずしてしまうほど、限りない意欲をみせています。
近年は全国の美術館において深沢幸雄の世界に関する企画展も多く開催され、さらにメキシコにおいても企画展が開かれるなど、多忙を極める中で、当美術館あてに「深沢幸雄の全貌」を展観し得る多くの作品及びコレクションを寄贈していただき、心からお礼を申し上げます。同時に、春仙、白根桃源両美術館において展覧会を開催できることに重ねて感謝の意を表し、多くの方々へこの感動をお伝えできれば幸いです。