オホーツク海が間近に迫り、豊かな漁場が広がる網走。十勝平野の北東部に位置し、酪農と畑作の町、鹿追。それぞれの地に生きた画家、居串佳一と神田日勝の作品を中心に、北海道の自然を海、大地、空のテーマに分けて、個々の主題を色濃く反映した画家たちの作品を紹介します。
普段、何気なく暮らしている土地を改めて見直してみると、そこには豊かな自然が広がっています。木々のざわめき、澄み切った空気、動物たちの気配、寄せては返す波の音。五感を研ぎ澄ませば、これらの自然の営みや佇まいが鮮やかに眼前に広がります。
海
居串佳一は、オホーツクの海とそこに暮らす人々を情感豊かに描き出し、木田金次郎は、波や光など移ろいゆく自然の息づかいを捉え、国松登は群青を基調色として北の冬の海を幻想的に表現しました。
大地
神田日勝は、茶褐色の絵の具に土の匂いを感じさせ、家や馬を克明に措き、寺島春雄は、凍てつく大地を硬質なマチエールで表現し、松樹路人は、パノラマのように広がる街の光景を明るい色調で描きました。
空
神田日勝は、原色の太陽に向って、歓喜の叫びをあげる人と馬を表現主義的に措き、松島正幸は、冬の人々の暮らしを詩情豊かに表現し、松樹路人は、足下から見上げる大胆な構図で家族の肖像を措きました。また、栃内忠男は、翼を省略された青の色面で描き、岩橋英遠は、立ち上る噴煙を緻密な表現で捉えました。