1889年、パリ近郊の裕福な家庭に生まれたコクトーは、ベル・エポックと呼ばれ、さまざまな芸術が開花した20世紀初頭のパリで青年期を過ごしました。幅広い交友関係のなから芸術的才能を発揮して早くから詩人として文学界にデビュー。しかし、少年期の体験から“死”を意識するようになり、生涯を通じてパートナーや恋人を求め、阿片も常用しました。そんなコクトーは人生を脱皮の繰り返しと考え、映画、演劇、絵画など次々と活躍の場を広げながら孤独な自らを表現し、1963年に亡くなるまで独自の美学で芸術界に刺激を与えつづけました。
本展は、コクトーの世界最大の個人コレクターのサヴァリン・ワンダーマン氏の所蔵から絵画、写真、陶芸など255点を厳選し、コクトーの繊細でしなやかな感性から生み出された芸術に触れようとするものです。またコクトーを日本に紹介した堀口大學にコクトー自身が贈った数々の貴重な書籍も特別出品します。
“死と再生”を意識し、死と隣りあわせの“いのち”を見つめつづけたコクトー。そうしたコクトーの芸術は、自分自身への純粋な生き方を貫いた一人の芸術家としての生きざまを示しているのではないでしょうか。
出品点数:255点
サヴァリン・ワンダーマン・コレクション
+25点(堀口大學文庫)