ロシアが世界に誇る美の殿堂、国立エルミタージュ美術館。ここには、19世紀末から20世紀初頭にかけて制作されたアール・ヌーヴォー様式のガラス工芸品が多数所蔵されています。これらは、パリの万国博覧会への出品物や、当時フランスとロシアの間に結ばれていた露仏同盟を背景とした、ロシア皇帝への進呈品でした。その中でも、1902年フランス大統領がサンクトペテルブルクを訪問した際にロシア皇帝ニコライ2世に捧げたエミール・ガレの大作《トケイソウ》は、コレクションの白眉となっています。
フランス東部ロレーヌ地方、ナンシーの地でガラス工房を経営していたガレは、日本美術の強い影響を受け、自然の生き物や草花を巧みに配した色鮮やかなガラス器を数多く制作し、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家として高く評価されています。
本展では、エルミタージュ美術館の所蔵する珠玉のガラス工芸コレクションの中から、《トケイソウ》を中心とするガレの作品の他に、ガレと並ぶナンシー派の巨匠であるドーム兄弟や、1920年代に至るまでの欧米の作家たちの作品をご紹介していきます。
これらの優れた作品は、諸外国ばかりか現地でも一般公開されていない秘蔵品で、そのほとんどが日本初公開となるものです。19世紀末から20世紀初頭にかけて花開いた、魅惑のガラス工芸の世界をお楽しみください。
出品点数:ガラス工芸など116点