日本は世界的にも考古学の調査や研究が盛んな国です。その大きな成果をもとに、日本文化のはじまりをヨーロッパに紹介しようという試みが、このたび文化庁主導の海外展として実現いたしました。ドイツ語でツァイト・デア・モルゲンレーテ(Zeit der Morgenrote;曙光の時代)と題されたこの展覧会は、シュリーマンを生んだ考古学伝統国ドイツで開催され、平成16年7月より17年1月まで、マンハイムとベルリンの東西二都市を巡回いたしました。ドイツにおける会期終了を機に、この展覧会を日本国内の皆様にも観覧頂けるよう、奈良国立博物館で帰国展を開催する運びとなりました。
青森県三内丸山遺跡や佐賀県吉野ヶ里遺跡、奈良県飛鳥池遺跡など、近年大きな話題をよんだ遺跡をはじめとして、旧石器時代から奈良時代までの各時代を代表する遺跡から集めた1500点以上の品々(国宝3件・重要文化財35件を含む)が一堂に展示されます。それぞれの時代相を映す石器や土器、金属器に加え、農具や漁撈具、漆工品、青銅・ガラス鋳造の道具、あるいは遠方からの交易品、祈りと祭りの道具など、さまざまな資料を通して古代人の生活や文化、そこに生きた知恵を復原して行きます。
中でも注目されるのは、火焔型土器や遮光器土偶、銅鐸、三角縁神獣鏡など教科書にも登場した古代の名品が勢揃いしており、これらを通覧するだけでも歴史を本物で学び、楽しむことができます。また、弥生時代に戦争があったことを物語る「銅鏃が突き刺さった人骨」や、興福寺中金堂の地下から発掘された金塊を含む鎮壇具など、話題性のある出土品も数多く展示されます。
これほど規模の大きく内容の豊かな考古学の展覧会は、これまで海外で開催されたことがなく、日本国内においても再び実現する機会はほとんどないと思われます。奈良だけの特別開催となりますので、是非、この機会に専門家や考古学ファンはもとより、歴史を学び始めたお子様やご家族の皆様にもご観覧頂き、日本文化の曙に想いを馳せて頂ければ幸いです。