棟方志功の画業の出発は油絵でした。同時に倭画(肉筆画)も描き、程なくして板画も彫り始めるようになりますが、初期の頃の油絵や倭画は後年の作品とは違って、色調は抑えられたものでした。また板画では《棟方志功の作品》とは言え、習作期の域を越えるものではありませんでした。
その後板画では白と黒の調和から生まれる美を目指し、また、裏彩色という技法を用いたり黒々とした画面の美を追求するなど、自在に展開して行きました。更に、溢れる制作意欲を抑えきれないかのように、板画や倭画で大画面の作品を制作するようになります。このたびの企画では、棟方板画の特徴の一つである裏彩色技法を駆使した作品や、棟方最大の板画《大世界の柵》を展示し、棟方芸術の軌跡を辿ります。