函館美術館は、国の特別史跡「五稜郭跡」に隣接して建てられています。戊辰戦争最後の戦場となった五稜郭も、現在では公園として開放され、市民の憩いの場として、また観光スポットとして、多くの人が訪れています。その公園の中に建てられた北洋博覧会観光館を利用して、昭和30年に開館したのが、市立函館博物館五稜郭分館です。「五稜郭」と「箱館戦争」の2つを大きなテーマとして、関連資料約400点を収蔵・展示するほか、年に1度の特別展を開催、長きにわたり、親しまれてきました。しかし、五稜郭公園内の箱館奉行所復元に伴い、平成19年11月末をもって、その役割を終えることになりました。
そこで、平成19年度、春のミュージアム・コレクションでは、「五稜郭讃歌」と題して、五稜郭分館所蔵の美術資料を中心に展示しています。中には、榎本軍の一員として箱館戦争に参加、後にウィーンに留学し、我が国の銅、石版画の先駆者となった岩橋教章の描いた《箱館戦争之図》、幕末に凄惨な場面を題材とした「血みどろ絵」で人気を博し、明治には戊辰戦争や西南戦争などの事件を伝える錦絵を多く描いた浮世絵師月岡芳年の作品、さらには、フランスでヨーロッパの伝統的な大理石彫刻を学んだ北村四海が、榎本軍の医師として箱館戦争に参加した高松凌雲を作った大理石彫刻など、明治の日本を代表する美術家の作品も。いつもとちがう展示室で、函館の誇る美術作品をお楽しみください。