ターナー(ジョセフ・マラード・ウィリアム、1775-1851)は、英国を代表する水彩画および油彩画の風景画家として今日広く世界に知られています。早くも十代初めに画才を開花させ、15歳の時にロイヤル・アカデミーの展覧会に初出品し、27歳の若さで同アカデミー会員となりました。
一方、ターナーには「研鑽の書」と呼ばれる有名な銅版画集があり、版画にも精力を傾け、銅版画のために水彩画を描いたこともあると言われる程です。そして多くのターナーの作品は、生存中から版画として刷られ、これらを媒介としてヨーロッパ各地に彼の名声は広まりました。
彼は生涯を通じて、英国内はもとより広くヨーロッパ各地を旅し、目に映る山、河、海、建造物や遺跡など、様々な姿をスケッチしています。76年の生涯においてその画風は、幾度かの変遷を見せていますが、一貫して自然に対する畏敬に満ちた鋭い観察眼は、こうした自然との対話の膨大な形象化によってより研ぎすまされたといってよいでしょう。
ターナーの銅版画でも、光、大気、水の微妙なうつろいの中に精神を参入させ、その決定的な瞬間を運びとって画面に定着するというターナーが風景画に開拓した新しい道を見ることが出来ます。
本展は、当館が所蔵するターナー後期の油彩画、水彩画、素描を原画にした銅版画集である「ターナー・ギャラリー」に収められた作品120点の中から30点を選び展示するものです。ターナー銅版画の魅力を是非ご堪能下さい。
[主な作品]
自画像 J.M.W.ターナー 1875年
コーフ城 J.M.W.ターナー 1875年
もやの中の日の出 J.M.W.ターナー 1875年
アルプスを越えるハンニバル J.M.W.ターナー 1875年
カルタゴ帝国の没落 J.M.W.ターナー 1875年
吹雪 J.M.W.ターナー 1875年
雨、蒸気、速度 J.M.W.ターナー 1875年