1980年代以後、美術のみならずデザインや出版、音楽など広範な分野で影響力を持ち、現在も精力的に活動を続ける画家・大竹伸朗の、九州初個展を開催します。
1955(昭和30)年、東京に生まれた大竹伸朗は、18歳で画家になることを決意。自らを試すため飛び込んだ北海道・別海の牧場での無給労働や、英国・ロンドンでの制作や出会いを通じて自らの進むべき道を見いだしました。1982(昭和57)年の東京での初個展で衝撃的に美術界に登場して以後、次代を担う美術家として注目され、日本を代表する美術家として国内外の展覧会に数多く出品を重ねてきました。
大竹伸朗を作品制作に駆り立てるものは、通常の「芸術」や「美」の概念領域には入りにくいものばかりです。ゴミ、印刷のヤレ(刷り損じ)、壁のシミなど、多くの場合路上で大竹が不意に遭遇する、人の無意識の気配や時間の痕跡を濃密にたたえた事物、さらには夢のイメージや目を閉じた時にまぶたに移ろう、彼の内側に存するおぼろげな形態。多くはありふれていて、時に安っぽくうすっぺらな事物の佇まいや気配こそが、彼に「新しい(ニュー)宇宙」を投げかけ、次作への衝動を呼び覚ますのです。
本展では、大竹伸朗の作品世界の幅広さに注目しつつ、大竹自身と路上の何物かが遭遇し、彼の手により変容する様子、そして彼が遭遇した事物やイメージ同士が互いにぶつかり合い、または静かに寄り添っている様子を、過去の展覧会未発表作約170点を含む総数約600点もの絵画、水彩、素描、彫刻などによってたどります。