昭和34年(1959)年、いわゆる「エネルギー革命」のもとに強行された石炭から石油への転換政策により、九州の炭田地帯には多くの失業者があふれていました。土門拳はこの年の12月、閉山の続く筑豊で、失業にあえぐ人々とそのこどもたちを、半月という短期間で撮りきり、翌月ザラ紙に印刷した写真集「筑豊のこどもたち」を出版しました。
「出来るだけ多くの人々にこの現実を知っ欲しい」という土門の思いから、百円という安価で出版されたこの写真集は、当時大ベストセラーとなり、ルポルタージュの名作として、社会的に大きな反響をもたらしました。
1960年発表のこの写真群は、47年たった現在でも決して古さを感じさせるものではありません。戦後高度成長政策の犠牲ともいえる厳しい現実を、こどもや労働者のあるがままの姿で、見事に切り取っています。昭和史に残るこの名作には、日本の今、そしてこれからを考えさせる力があります。