朝鮮王朝あるいは李氏朝鮮とも呼ばれる時代は、1392年から1910年にいたるまで、27人の王により518年にわたって統治された世界史上まれにみる長命な王朝です。
当時の社会生活、芸術文化は、仏教にかわり儒教を基盤として展開されました。社会のエリートであった文人が余技として描いた伝統的な絵画。逆に無名の画家たちによって描かれ、一般庶民層に幅広く浸透していた民画。当時の世界の一流レベルに達し、日本にも大きな影響を与えた陶磁器類。華やかで調和がとれた家具や服飾、そして細やかな手仕事の極致である刺繍や組み紐、装飾品。朝鮮王朝の人々は、それぞれの身分に応じて、このような洗練された美術品で身の回りの空間を充たし、大河のように悠然とした時の流れの中で生活していたのです。
当時の社会は、儒教の教えに基づき、男性主の部屋(サランバン)と主婦の部屋(アンバン)のように、生活のさまざまな場面で、男性的社会と女性的社会とが明確に区別されていました。本展は、そうした二つの視点からこれらの多彩な芸術文化を紹介します。生活全般にわたる美術・工芸品約260点は、国立中央博物館、国立民俗博物館など、韓国を代表する美術館、博物館などのコレクションから厳選されました。
いよいよ2002年には、日本と韓国を舞台にしたワールドカップが開催されます。今後、映像や直接の往来を通して韓国市民の生活、文化に触れる場合は飛躍的に増えていくことでしょう。本展も、そうした両国間の相互理解・交流をさらに促進する機会の一つになれば幸いです。