木田金次郎(1893-1962)は、北海道を代表する画家のひとりとして、生まれ育った岩内で描き続けた画家です。若き日の木田の姿は、有島武郎(1878-1923)の小説『生れ出づる悩み』で描かれ、広く知られていますが、有島の死後、画業に専念した木田は、岩内の人たち、交流を重ねた様々な人たちに支えられて描き続けました。
「木田金次郎の交流圏」をテーマとする今回の展覧会では、木田金次郎の画業を高く評価し、支援を惜しまなかった人物のひとりとして、北海道銀行初代頭取の島本融(しまもと・とおる:1904-1976)とのかかわりを紹介します。
島本は銀行経営者であると同時に、北海道の文化に目を向け、支援を惜しまなかった人物としても知られています。とりわけ木田を全面的に支援し、「北海道を代表する画家のひとり」という、木田の今日的評価の基礎を築いた存在として、島本は非常に重要な役割を果たしました。
島本は、「風土に根を下す」木田に「北海道的なもの」を見出し、その独自の画業を非常に高く評価しました。北海道銀行のカレンダーに木田の作品を用い、人々が広く木田の作品に親しむきっかけをつくったのも、島本の木田に対する支援の一端といえましょう。地域文化に対する島本の理念と、同様に島本によって紹介された作家の作品を通して、地域に根差して制作することの意味を探っていきたいと思います。
「島本融の眼」を通じてあらわれる「北海道的なもの」。ひとりの支援者の目を通じて、新たな木田の魅力が発見される機会となれば幸いです。