小松豊は1940年小倉生まれ。大阪の浪速短期大学の絵画専攻科を卒業した後、北九州へ戻り、以後ずっと小倉を拠点として活動しています。
1960年代、引っ張られた網の目にヒントを得た絵画《私の地図》シリーズでシェル美術賞展、日本国際美術展(東京ビエンナーレ)など、当時の華々しい舞台にデビューし、注目を集めました。その後、不思議な視覚効果を持つ《色を編む》《色を積む》シリーズや、概念や記号の物質性をめぐる《梱包》《マイナス空間》《水平線の拓本》シリーズなど、「目の常識」だけでなく「思考の常識」をひっくり返す作業へと作品を発展します。
作品のスタイルは多岐に渡りますが、初期の作品から近年の五角形絵画《アステラス》シリーズに至るまで、氏の作品は一貫してクールさとユーモアの絶妙なバランスの上に成り立っています。思考の網の目をくぐり抜けながら美術のウラオモテを軽やかに往来する作品の向こう側には、人類の知的な営みへの敬意と挑戦が見え隠れします。