このたび竹喬美術館では、法隆寺金堂の第一号壁から第十二号壁にいたる壁画のコロタイプ版による原寸複製を中心とする展覧会を開催します。
法隆寺金堂壁画は、昭和24年(1949)1月26日の不慮の火災により焼損しました。世界に誇る至宝が罹災したことは誠に残念でありましたが、これを機に「文化財保護法」の施行や「文化財防火デー」の制定がなされました。
このたびの展覧会では、この至宝の美術史的な価値を、コロタイプ版の複製と模写により再確認するとともに、歴史的な遺産としての絵画の「複製と模写」という課題についても考察したいと思います。
具体的には、例えば縦314センチ、横265センチに及ぶ第1号壁《釈迦浄土図》など、十二幅の原寸大コロタイプ複製を一堂に展示し、併せて焼損前に入江波光(いりえはこう)や林司馬(はやししめ)らが制作した第六号壁《阿弥陀浄土図》の模写などを展示する予定です。さらには、《弘安本北野天神縁起絵巻》など優れた絵画遺産の模写や複製を数多く展示します。
法隆寺金堂の罹災から60年近くなろうとする今日、約40点の作品や資料が展示されるこの企画を通して、文化財保護に対する認識が一層高まれば幸いです。