鹿児島市立美術館では、平成17年度にフランスの画家ジョルジュ・ルオー(1871~1958)の油彩画「聖顔」を収蔵しました。重厚で力強い筆致を示すルオーの作品は日本でも高い人気があります。彼が生涯を通じて追求したのがキリスト教のテーマであり、なかでも「聖顔」は、50年の間に40点の作品を残しています。これは、茨の冠をかぶり十字架を背負ったキリストがゴルゴダの丘に向かう途中、ヴェロニカという女性がヴェールでキリストの顔をぬぐったところ、キリストの顔が生き写しになったという聖顔布の伝説に基づいた作品です。苦悩のうちにも慈愛を湛えたキリストの描写はルオーの深い精神性を感じさせます。
本展では、「聖顔」を初公開するのにあわせて、ルオーと同時代のフォーヴィスム(野獣派)の作家たち、マチス、ドラン、ヴラマンク、デュフィなどの油彩画やキリスト教のテーマに取材したルドンの版画集「聖ヨハネ黙示録」といった既収蔵の西洋美術作品を紹介します。また、熊本県在住の銅版画家、浜田知明氏から寄贈いただいた「ボタン(B)」と、第60回記念南日本美術展の海老原賞受賞作品、小牟禮雄一「Metaphor Ⅵ」を展示します。