上野長雄は、神崎郡香寺町に生まれました。大工の見習いなどを経て神戸市役所に勤務します。絵が好きだった彼は、勤務のかたわら中安保の地上社洋画研究所に学び、木版画制作の道に入りました。同じ色でも何十回も重ねて摺り、独特の深みを持つ色を出したり、和紙を湿らせて絶妙なぼかしの効果を出すなど、複雑な摺りの技術を用いたことから、画家の仲間内では「摺りの名人」と呼ばれていました。作品は抽象的傾向のものから、日常的な器物を題材にした静物や、風景まで様々なものをとりあげています。このたびは当館所蔵品を中心に約80点の作品を選び、その世界を紹介いたします。