一昨年、故岡﨑重樹氏よりオリエント美術館へ寄贈された岡﨑コレクションは、故岡﨑林平氏によって戦後まもなくから収集が始められました。オリエント・コレクションは、主にエジプト、ギリシア、ペルシア、ガンダーラといった地域の考古美術品約600点からなります。作品の状態や年代調査など調査研究の終了した考古美術品約150点について、2006年1月から3月末まで、特別企画展を行い、好評を得たことは、記憶に新しいところです。
このたびの小企画展では、エジプト部門から、象形文字の世界に焦点をあて、造形美の世界を堪能していただきます。古代エジプトにおいて、象形文字と絵や彫像は、基本的に同じ約束事をまもりながら形作られていました。それゆえに、「聖刻文字」と訳される「ヒエログリフ」は単なる抽象的な「記号」ではなく、それ自体が具体的なイメージを伴う「象徴」と認識されていたのです。古代エジプトの造形に、神秘的な印象を受けるのはそのためでしょう。
岡﨑コレクションは、現在も調査研究が進行中です。これまでに判明した、新知見をあわせ、死後の平安を願った古代エジプト人の精神世界の一端を紹介します。
この小企画展は、早稲田大学との共同研究事業の一環として、会期中には早稲田大学関係者による特別講演会を企画しています。小企画展と共に、講演会を連続受講する事で、オリエント美術館の新ジャンル、古代エジプト部門への理解を深める絶好の企画です。