戦後、日本において一大旋風を巻き起こした書と絵画の動向を紹介します。お互いの枠を超えて、影響を与えあいながら個々の独自性に目覚めていった姿を見ることができます。書では、比田井南谷による心線作品の登場や、雑誌『墨美』の創刊、そして墨人会の結成というエポックメーキングな出来事を中心に取り上げます。文字を書の範疇から超えた所まで高めた井上有一や、墨の線にて静謐な抽象の世界を描きだした篠田桃紅の作品は、世界に類のない表現領域に踏み込んだものです。絵画においても、この動向と同調するかのように、己の表現を結実させていった吉原治良や須田剋太らが登場してきます。さらに海外で活躍した作家として、真に世界に通じる表現にいたった菅井汲、田淵安一等を紹介します。彼等の作品にも、同時期に日本的なものの見方や捉え方を拠り所とし、確固たる表現を模索してきた過程が伺えます。今日の私たちにとって、書とは絵画とはいかなるものでしょうか。分野を超えて共鳴しあう作品をどうぞご覧ください。