昨年、開館30周年を祝した私たちの美術館では、今年度のさきがけに豊島弘尚のこれまでの歩みを集約する展覧会を開催いたします。
豊島弘尚は、1933年青森県上北郡に生まれ、八戸市で育ちました。東京芸術大学油絵科に学び、卒業の1957年に安宅賞を受賞、在学中より<新表現グループ>を結成し、同人として活躍を続けます。1974年から文化庁在外芸術家派遣員として北米、北欧に滞在、1998年第21回安田火災東郷青児美術館大賞を受賞し、現代日本画壇の有力な画家として国内外で旺盛に活躍しています。
豊島は、1987年北欧に滞在した折、極光(オーロラ)に出会います。以来、<北の光>に魅せられ、それが制作の重要なモティーフとなっていき、初期の現代人の抱く不安や孤独を投影させた世界から、北欧神話や極北のイメージを題材とした雄大で幻想的な宇宙空間を描くようになります。また一方、故郷八戸の風土や匂いも織り込まれ、さらに亡き父や母が生命の象徴の星辰として現われてきます。
本展では、終始一人のアーティストとして在野に徹し、活動を続ける豊島弘尚の1960年代の初期作品から2006年の近作に至る55点を展示いたします。この卓抜な画家の、無類な美的世界の全容を理解し、その清新な魅力を存分に満喫していただく、またとない機会となれば幸いです。