日本の美術が絵画や工芸作品の中で題材としてきたものを、大きく「和(倭)」と「漢(唐)」に大別することができます。「和」とは、日本の風土を基調とした自然や物語が題材となったものをいい、「漢」とは、中国の風土を基調としたそれを意味します。この二つは用途によって使い分けられ、例えば、女性の居室には倭(大和)絵が、男性の居室には漢画が主として描かれたほか、プライベートな空間には和の題材が、政治的な空間には漢の題材が好まれたと考えられています。「和」の題材の代表格『源氏絵』などは、女性の居室、あるいは私的な空間において用いられました。
今特集では「源氏物語」をはじめ、「漢」を題材とした『琴棋書画図屏風』『帰去来図屏風』、邪気を払う神として中国で伝えられる鍾馗をモチーフとした印籠(写真『蒔絵鬼に鍾馗図印籠』)なども展示します。穏やかな柔らかさが漂う「和」の題材と、雄大さと厳しさに満ちた「漢」の題材の違いもご覧下さい。