今回、パリ、ポンピドーセンター所蔵のデュフィ作品138点を公開することになりました。初期の印象派そしてフォーヴィスム(野獣派)の時代から、晩年の「貨物船」の連作まで、画家の生涯を辿りその芸術の魅力を余すところなく伝える展覧会です。「軽さ」と「楽しさ」で語られることの多いデュフィが、いかに多くの前衛的な創作を試み、多様な表現を発見していったか。それはデザインと美術を融合することであり、一方で多様な線表現を、豊かな色彩とどう結びつけるかという実験でした。
また、デュフィのテーマである「海」「水浴びする女」「港」「競馬場」「アトリエの裸婦」「オーケストラ」などは、すべて束縛のない逸楽の光景です。虹いろの色彩と飛翔する線によって描かれた作品は、どれも光に満ち溢れ、悩みや苦しみとは無縁の表情を見せます。
だからといって彼が、人間の感情の激しさや暗さに無関心であった訳ではありません。むしろ知りつくしていたからこそ、絵には楽しさと美しさを追い求め、余暇(レジャー)というテーマを選びました。その美意識は観る者に安らぎを与えることを目指したマティスと通じるものがあります。
この展覧会が、デュフィという画家をより深く理解することができる体験となり、彼の作品をとおして、豊饒なイメージが氾濫した20世紀という時代をふりかえるまたとない機会となることを、願ってやみません。