熊谷誠は、彼の関心事である「境界」、ふたつの事柄のはざまをテーマに、山の稜線・川をモチーフとしたシリーズを展示する。 「地平線は、ある地点から眺めると確かに認められるのですが、どこまで近づいても辿りつくことはできません。こういった目に映る現象と自体の曖昧さは、私が境界に惹きつけられる理由の一つです。」と彼は言う。 「地平線から盛り上がる大地の起伏を眼でなぞる時、景色の輪郭を見つけることができます。「山脈」は天地を分ける境界線であり、「川」は大地を分ける境界線であると思うのです。」 北野裕之は写真や映像に興味を持つ。「写真を撮影した後、でき上がってきたプリントを見るといつも違和感を感じます。写真に撮った場面を頭の中で思い出そうと努力しても、何かぼやけていてはっきりと思い出せません。 私たちは、写真のように正確に色や形、光、影、その場面は記憶できませんが、確かに写真より、より正確にあらゆる物を思い出せます。その場の雰囲気、空気、感じたもの、感じた色、形、光、影、そのすべて、それらは私たちが、自分のあらゆる感覚、経験、また肉体を通し、見て感じ、記憶・経験した、感覚のイメージなのだと思います。」 彼はこのような事柄を写真や映像、また、自分自身を手がかりとして、われわれの感覚やイメージ、そこにある不確かな曖昧なものを現実にするために作品を作っている。
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