1枚の絵を描くプロセスの中で、数多くのイメージは定着することなく、その上から新たな絵具によって埋葬されてしまう。 武蔵篤彦は、作品の表面に表われ出ない地層、もしくはレイヤーのように塗り込められたイメージの堆積に興味を持つ。 版画という視点から見れば、それは多色刷りにおける一枚一枚の版そのものである。 武蔵篤彦は、これまでの作品で垂直方向のシステムで絵を展開してきたが、今手がけている「核としての絵画」シリーズでは、むしろ水平のベクトルで試みようとしている。 絵を分解することで、上下と左右を取り払い、重力のない絵を目指している。 絵画と版画を行き来し、またフィードバックさせることにより、版の思考は彼の絵作りに大きな影響を及ぼしている。