パリの街並みを詩情豊かに描いたモーリス・ユトリロ(1883~1955)は、わが国で最も人気のある画家のひとりです。母である画家シュザンヌ=ヴァラドンの愛情を受けることなく、孤独とアルコールに苛まれた少年期を送り、絶望や苦悩から自らを解放するためキャンバスに向かい、静謐で哀愁の漂うパリの情景を自身の純粋な視点で描き続けました。 本展では、ユトリロが生涯に残した膨大な作品の中から、1909年頃から15年頃の「白の時代」と呼ばれる初期から、晩年までの作品(日本初公開作品30数点を含む)と、パレット、筆、関係写真などの資料を紹介し、19世紀初頭、多くの画家が活躍した全盛期のパリで時を同じくして花咲き、孤独の中に結実したユトリロの画業を回顧します。