光と影の共演によって生み出される影絵を芸術として広く浸透させた画家それが藤城清治です。彼の創りだす影絵の世界は、美しく幻想的でありながら、どこかユーモラスでもあり、見るものに郷愁を喚起させます。本展は影絵作品約150点により藤城清治の半世紀に及ぶ仕事を振り返る、集大成とも言える展覧会です。
光と影で表現する絵画『影絵』。影絵を芸術として広く浸透させた作家が藤城清治です。黒を生かしたモダンな作風は童話の世界や郷愁を誘う風俗、景色を幻想的な色彩のシルエットで描く作品は高く評価され、1989年には紫綬褒章、1995年には勲四等を受賞しています。
本展は、作家本人の所蔵品を中心に、戦後間もないころのモノクロ作品から、本展覧会を記念して作成した新作までの作品約150点を選りすぐりました。
1枚のスクリーンの上に、描き、切り抜き、貼るといった多様な技法を繰り返す中で、華麗な夢幻の世界を創り上げていく藤城清治。様々な光源のバランス、貼り込む材質の透過性まで緻密に計算されています。色彩の饗宴とも言える彼の影絵は、見る人に鮮烈なイメージを与え、また作品に登場するこびとや猫、木馬など、さまざまなキャラクターたちは、ユーモラスな一方、ある種の郷愁を喚起させます。今回の展示によって、光と影の詩人・藤城清治の世界の魅力を十分に体感することができるでしょう。