たて縞によこ縞さらに格子縞など、国旗や衣服の図柄から自然界の現象まで、わたし達は似た像が繰り返し現れることを「縞」と呼んでいます。そんな縞模様に目を奪われる瞬間とは一体どんなときでしょうか。 繰り返し運動の代表として波や音があります。たとえば似通った2つの音を掛け合わせると、お互いの周期のずれから新たな縞が生じ、それが「うなり」となって聞こえてきます。同じことは視覚でも起こります。モワレと呼ばれる現象は、規則正しい周期が僅かにずれて重なったときに生じる縞模様です。繰り返しの縞のわずかな「ずれ」から生じる新たな縞。繰り返されてきた「何か」がほんのわずかに崩れた瞬間に、わたし達の心は動き、縞に目を奪われるのではないでしょうか。 縞という極めて単純な構造。この構造のもつ効果は、現代の美術や音楽において今まで以上に注目されています。それは時に厳密な反復であったり、時にずれを伴った相似形の繰り返しであったりします。どちらも縞の持つ魅力を最小限の手法の中から最大限に引き出していると言えるでしょう。 この展覧会では繰り返しと「ずれ」という観点から、周期を崩した縞模様を「オフ・ストライプス」と称し、縞の持つ魅力を市民ミュージアム収蔵の現代作品や体験型の造作などで紹介するものです。私たちを引惹きつける「オフ・ストライプス」の瞬間、この展覧会を通してそのような縞模様に心が奪われる瞬間を体験してください。