今年50歳の斉藤典彦(1957年平塚市生まれ)は、現代日本画の実力作家として活躍しています。東京芸術大学在学中の1976年に創画展に初入選。1989年、第10回山種美術館賞展出品の《Shaman Moon》(山種美術館蔵)が優秀賞を受賞。木片を貼り付けた実験的な半立体作品にはアニミズムへの憧憬を感じさせ、おおいに注目を集めます。東京芸大同年代の岡村桂三郎、河嶋淳司、千住博とともに次代を担う作家として活躍し、1993年、代表作《Nachi》(東京国立近代美術館蔵)では名瀑・那智滝の水流を、中央に空けた空間で表す現代的な知性が高く評価され、文化庁買い上げとなります。創画展では創画会賞、春季展賞の受賞を重ねるほか、1995年から96年にかけて文化庁派遣芸術家在外研修員としてロンドンに留学。この頃から水の国、日本を表す新たな山水として《Water Land》シリーズを制作し、また《luminous》シリーズでは重ねて描いた岩絵具を透かして絹地や岩絵具がほのかな光を放ち、冬の光が見事に表現されています。これらの作品では、自然に潜む目に見えない根源的な気配が表され、多様性を帯びる現代日本画の世界で注目されています。現在、東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻の准教授。
この展覧会では、1982年から近作に至る大作を中心とする約30点により、日本画の現在をさぐります。