30年におよぶ個人コレクションの成果 帯広で建設業を営んでいた故・高橋博信氏は、江戸時代後期の浮世絵美人画に注目し、30年以上にわたって作品を自らの目で選び、心血を注いでコレクションを築いてきました。その多くは彫りと摺りがよく、保存状態も良好であり、当時世界でも最高の水準に達した日本の木版画の技術と、あざやかな色彩をまのあたりにすることができます。また、揃物(シリーズ作品)が多く、なかには世界でもまれな完全なセットが含まれるなど、特色のある貴重なコレクションとなっています。 国貞・国芳・英泉が描く江戸のヒロインたち コレクションのなかには、江戸後期の浮世絵界をリードした歌川国貞(うたがわくにさだ 1786-1864)、歌川国芳(うたがわくによし 1797-1861)や溪斎英泉(けいさいえいせん 1791-1848)の作品が数多く含まれています。彼らの筆は遊女、芸者、市井の娘や婦人たちを、容貌からしぐさ、衣装の色や文様にいたるまで生き生きととらえています。そこにはまた、江戸庶民の“いき”の美意識が色濃く投影されており、時代の空気がよく伝わってきます。 情緒あふれる浮世絵の世界 高橋博信コレクションは、平成16年に札幌の北海道立近代美術館に寄贈されました。以来、同館では、退色や紙焼けなどを起こしやすいデリケートな浮世絵を、良好な状態で保存しつつ公開に最大限適した状態にするために、力を尽してきました。本展は、そうした成果に基づき、コレクションから選りすぐった国貞・国芳・英泉の作品180余点を、寄贈後初めて札幌以外で紹介するものです。 江戸情緒あふれる浮世絵の世界を、ぜひお楽しみ下さい。