アドリア海の潟に浮かぶように佇むヴェネチアは、その建国当初より生活の中の移動手段として船を使い、航海術に長けていました。そのため10世紀には強力な海軍力を誇るようになり、ビザンチン帝国の西に広がるアドリア海、東地中海沿岸の小都市を海賊から守る“海の警察”の役目を果たしていました。ヴェネチアの商人たちはそれら小都市を中継地点とし、地中海を縦横無尽に商船を走らせて地中海貿易を行い、ヴェネチア共和国に巨万の富を築いていきました。
ヴェネチアン・グラスのエナメル彩技法は、イスラム圏で作られていたガラス器の影響を強く残しています。また、トンボ玉と呼ばれるビーズ類は、アフリカへの輸出用としてその多くが製作されました。この様にヴェネチアン・グラスの歴史からも、ヴェネチア商人たちによる他国とのつながりを見ることができます。
今回の展示では、他国から影響を受け、また他国へ影響を与えたヴェネチアン・グラスを通して、ヴェネチア共和国の発展を担ったヴェネチアの商人たちの活躍をご紹介致します。
展示内容
聖マルコの獅子文デカンター、聖ニコラウス文聖水瓶
点彩花文蓋付ゴブレット、モスクランプ形花器、船形水差 等
構成
1、海との結婚…海に向かって開かれた国“ヴェネチア”と海とのつながり
作品)ガラスの帆船、ドージェの衣装、船形水差
2、守護聖人…何人かいるヴェネチアの守護聖人の中で、商人と縁の有る聖マルコと聖ニコラウスを紹介。
作品)聖マルコの獅子文デカンター、聖ニコラウス文聖水瓶
3、東方とのつながり…エナメル彩技法にみる、東方世界とのつながりについて。
作品)エナメル彩コンポート、花弁文コンポート
4、ヴェネチアの商人…ヴェネチアの商人の活動、ガラスとの関わりについて。
作品)トンボ玉、レース・グラス、ダイヤモンド・ポイント彫刻
5、ヴェニスの商人…ウィリアム・シェイクスピア作『ヴェ二スの商人』について。
作品)モスクランプ形花器、アラベスク文花器