松本山雪は、江戸時代初期に活躍した伊予松山藩の御用絵師です。当地では馬の絵で知られていますが、残された作品は山水図、名所絵、風俗画、やまと絵など多岐にわたります。画壇の趨勢が狩野探幽の瀟洒(しょうしゃ)な画風に傾斜していくなか、京狩野の影響を受けた癖のある山雪の画風は、一度眼にすると忘れがたい存在感を示しています。
山雪は、地方を活躍の場としたこの時代の絵師としては作品が比較的多く残っています。近年注目されているこの時代の絵師の活動を探っていく上で、実に興味深い存在といえるでしょう。
本展覧会では、松本山雪の作品を軸に同時代の絵師たちにも目を向けます。戦乱の世からようやく抜け出し、以後長く続く太平の世の揺籃期(ようらんき)となったこの時代、確かな存在感を示した絵師のすがたに想いをめぐらせていただければ幸いです。