旧態依然たる日本画への批判が高まりを見せる戦後の混乱期,加山又造(1927~2004)は画業を出発させました。「世界性に立脚する日本絵画の創造を期す」と謳った創造美術展(現在の創画会展)に初入選した加山は,西洋の20世紀美術を積極的に摂取して新たな日本画を創り出そうとする画壇の動きと呼応するように,初期には鳥や動物をモチーフにシュルレアリスムやキュビスムなど西洋画の影響を強く受けた作品を発表します。しかし昭和30年代後半になると日本の伝統絵画に回帰するようになり,大和絵や琳派から学んだ華麗な花鳥風月の世界を築き,琳派を現代に甦らせた画家と高い評価を得ました。さらにライフワークとして裸婦を描き,昭和50年代には水墨画のもつ精神性の深い表現に装飾性を加味するなど,その画業は最後まで変遷し,新たな芸術を模索し続けました。東洋絵画の伝統や日本人の持つ感性を,現代的な造形に昇華させたその芸術によって,戦後日本画壇を常に牽引し続けました。平成15年,その功績が認められ文化勲章を受章しますが,翌16年76歳でその生涯を閉じました。
本展では,初期から晩年までの代表作により,その多彩で奥深い加山芸術の全貌を紹介します。
加山又造は屏風の大作を描き続けたことでも知られていますが、この展覧会でも30点近くの屏風作品が、壁面長100メートル余りにわたって展示されます。金箔、銀箔を多用した優美で華麗な琳派に倣った作品、水墨で描かれた日本や中国の自然など、屏風という東洋独自の絵画形式による大画面が会場内に広がる様は、圧巻といえるでしょう。