金山明(1924-2006)は、戦後の重要な芸術運動、「具体美術協会」のメンバーとして知られる作家です。1955年に「具体」の活動に参加した彼は、退会する65年までの10年間に、足跡の作品やバルーンの立体等、既存の美術の枠に捉われない自由でダイナミックな作品を発表しています。とくに自走する玩具の車に描かせた作品は、個人の表現領域に無機質な機械を持ち込む試みとして、美術史に重要な足跡を残しました。
本展覧会は、金山明の最初の回顧展となるものです。彼は初期の1950年代前半に、「具体」時代とは異なる、極度に絵の要素を切り詰めた禁欲的なドローイングや絵画を展開しています。また「具体」以降は、暫く発表活動を休止した後、1990年頃から音楽の視覚化を試みた平面のシリーズや、太陽と地球の距離や銀河と地球との相関を図形や数値で表わす絵画等を発表してきました。ミニマル、アンフォルメル(不定形)、図式、記号など、表現は様々ですが、金山の作品に一貫して窺えるのは、「見えないもの」への関心と、個人的、身体的要素を極力排し、作品の自律性を保持しようとする姿勢です。この展覧会では、初期から晩年までの代表的な絵画、ドローイング、立体、映像資料等を通して、希代のモダニスト金山明の表現世界を探ります。