本展では、重文・染付鷺文三足大皿(佐賀県立九州陶磁文化館蔵)や重文・色絵桃文大皿(MOA美術館蔵)などの伝世の名品を中心に約230点を展示し、日本磁器の最高峰である鍋島焼の魅力にせまります。
佐賀・鍋島藩の御用窯で、有田の民窯から最高の技術者を集め、技術の漏出を厳しく制限する管理のもと、採算を度外視して焼かれた「鍋島」。美しく、かつ斬新で高度に洗練されたデザインは、“日本磁器の最高峰”の名にふさわしいと言えます。
従来の鍋島展では、陶工および鍋島藩側の事情にもとづく視点を重視した変遷が紹介されてきましたが、本展は、鍋島焼は将軍家献上を主目的としたため、幕藩体制の絶対権力者・徳川将軍家の動きに敏感に反応して変遷を遂げた、という新たな視点から藩窯の歴史をたどるものです。
鍋島焼は、三代将軍徳川家光の時に、中国磁器に代わる献上磁器として肥前・有田の岩谷川内藩窯で誕生しました。この有田時代のあと伊万里市大川内に藩窯は移転し、初期鍋島がつくられます。五代将軍綱吉の元禄時代に隆盛期を迎え、幕府財政建て直しを図った八代将軍吉宗の時に隆盛期は終わりますが、その後、十代将軍家治の田沼意次時代に新しい鍋島様式ができあがりました。
こうした江戸の徳川将軍家を頂点とした政治・経済情勢下での、鍋島焼の陶工および鍋島藩の動きによる鍋島焼の変遷という視点から、各時代に日本で最高峰の磁器をつくり出した鍋島焼の全貌を、最新の研究成果をもとに紹介いたします。