東京都現代美術館では、1999年に第1回展を開催して以来、現代を反映したテーマを設定し、日本の新しい美術の成果を紹介するグループ展を「MOTアニュアル」題し毎年開催しています。第8回目となる2007年のテーマは「等身大の約束」です。
多量の情報を距離や時間に関りなく瞬時に交信できる情報化の進展は、バリアフリーや新たなネットワークの形成をもたらしました。しかし、意識や経験は信号化され、人と人とのつながり、時間や地域の感覚、自己の存在までもが希薄になるなど、私たちの知識や認識のあり方に大きな変化をもたらしています。癒しや自然回帰、伝統回帰という近年の風潮は、情報化社会に違和感を覚え、プリミティブな関係を求める人々の意識の現れといえましょう。
今回の「MOTアニュアル2007 等身大の約束」では、このような近年の風潮を敏感にとらえている5名の作家を紹介します。秋山さやか、加藤泉、しばたゆり、千葉奈穂子、中山ダイスケ、それぞれの表現方法は様々ですが、情報化社会の中でのコミュニケーション、知覚や認識の危うさをあらわにし、地域や社会など身の回りの関係を自らの立ち位置から見つめ直す作業をしている作家たちです。
この展覧会を通して、意識しなければ見過ごしてしまう人と人との関係や人とモノとの関り、自分自身の存在について“等身大”の視点から考える機会になれば幸いです。
展覧会のポイント
★情報化社会の中で見失われがちな生活感覚から製作された美術作品です。
★グローバリズムの中で切り捨てられてしまう身近な人と人との関係や地域の大切さについて再発見します。
★5名という従来のMOTアニュアル展よりも少人数だからこそ、それぞれの作家の世界を堪能できる、会場構成になっています。
★若手から中堅の参加各作家は新作を中心に展示します。