柳宗理(1915- )は、フリーランスのデザイナーとしていち早く活動を開始し、戦後のインダストリアル・デザインの確立と発展にもっとも重要な足跡を記したデザイナーです。生活環境が急速に変化し成長していくなかで、工業製品や身近な生活道具のデザインをとおして自らの芸術性を明らかにしてきました。
1952年第1回新日本工業デザインコンクールで受賞した《レコードプレーヤー》、1957年第11回ミラノ・トリエンナーレ受賞の《白磁土瓶》《バタフライ・スツール》をはじめ、インテリア、セラミックのテーブル・ウェア、“早く沸くヤカン”などのさまざまな生活雑貨、ミシンや自動車、そして歩道橋のような環境構造物まで、実に広範かつ先駆的なデザイン活動を繰り広げ、今日に至るまで国際的にも高い評価を得てきました。それらはモダン・デザインの合理性に応じ、手仕事による工芸ではなく、機械生産による使いやすくて美しい、いわゆる“用の美”を表して端正な簡明さと暖かさをうかがわせています。
柳宗理のデザイン姿勢には社会生活を鋭く洞察した“日常の美”という思想性が一貫してあり、日本の伝統や風土性からも、いよいよ再評価がなされています。今回の展覧会では、1950年代から60年代にかけて戦後のインダストリアル・デザインを先駆的に開拓した、柳宗理デザインの確立を示すとともに、国内外で現代性が再認識されている優れたデザインを紹介します。