鈴木鵞湖(1816~1870)は下総金堀村(現在の千葉県船橋市金堀町)に生まれ、幕末の江戸の地で画家として活躍しました。現在は本人の画業より、近代美術史上重要な作家である石井柏亭・鶴三兄弟の祖父として知られる存在ですが、当時は江戸画壇の巨星谷文晁(1763~1840)の画系に連なる画人として地位を確立していました。
幕末から明治期にかけての文人画は今まで富岡鉄斎・奥原晴湖といった一部の作家の画業に限ってとりあげられてきました。しかし当時文人画は大変盛んに行なわれ、大勢の画家が活動していました、パトロン的な人物が自ら筆をとりセミプロ級の腕を誇る場合も少なくありません。鈴木鵞湖の画業を通じてそのような文人画の熱い盛り上がりの一端をうかがうことができるのです。また鈴木鵞湖の属する谷文晁の画系は明治期の画壇に活躍する実力者を多く輩出し、明治以降の絵画史を考えるうえでも重要といえるでしょう。
本展覧会ではご子孫の家に伝わった作品、鵞湖と交際のあった幕末明治の偉人松浦武四郎旧蔵作品を含む62点で鈴木鵞湖の画業をはじめて本格的に紹介します。
主な出品作品
「十六羅漢像図」(蔵福寺蔵 千葉県有形文化財)
「于公高門図」(千葉市美術館蔵)
「西園雅集図」(千葉市美術館蔵)
「蜀の桟道図」(千葉県立美術館蔵)